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客員教授からの
お知らせ

メディア2021.08.17

神田先生が新しい時代の総説を執筆されました

学術雑誌で「総説」というと、定められたテーマに対して、これまでの研究を図表を引用しながらまとめるというのが常識です。ところが・・・今回、神田先生は図表のない新しいタイプの総説「小説的総説」の執筆に挑まれ、このたびIFSCCの学術誌「IFSCC Magazine」に”Evolution of Antiperspirants and Deodorants ” というタイトルで掲載されました。そこで今回は、神田先生に、執筆のねらいや想いをお伺いしました。

南野:今回、「小説的総説」を書こうと思われたきっかけを教えていただけますか?

神田先生:最初は、デオドラントの総説を執筆してくれないか?と海外から頼まれたことから始まります。どんな総説にしようかと考えたときに、普通の総説を書いても面白くないのではないか?と思って・・・。これまでも南野先生とも「ネット時代の総説」について、いろいろ議論してきましたよね?


 
南野:そうですね。我々の議論って「喧嘩している」と誤解されるほどヒートアップしますよね(^^)/ 過去の総説もネットでガンガン探せる時代にもなり、総説の在り方についても、いろいろ議論しましたね。神田先生は昔から小説派で、私はマンガ派で・・・

神田先生:デオドラントについても既に多くの人が総説を執筆されているので、改めて網羅的な総説を書いても読まれる方も面白くないのでは?と思っていたので、自分がかつて共同研究者と行った研究を回顧しつつ、最近(2018年以降)のIFSCC大会で発表されて私の記憶に残った研究を解説し、全体を物語調にまとめたいと思ったのです。

南野:前半は神田先生がIFSCCロンドン大会で受賞された研究についてのお話しですよね?

神田先生:はい。前半は自分と共同研究者で行った研究で、毎年本校「実践化粧品学」で講義している80年代当時は画期的だと言われた新規消臭剤の開発について書いています。ちょっと悪乗りして(笑)、読者にはタイムマシンに同乗して80年代に戻ってもらいます。そこで、現在我々があたりまえのこととして捉えている人の臭いに関する知見やデオドラント製品について、当時(80年代)にはなかったものは何なのかを明確にしました。その違いを埋めるための第一歩を果敢に踏み出したのが我々の研究の目的だったというところから話は始まります。

 

南野:確かにタイムマシンで80年代の研究を間近で見ている気分になりました(^^)/

神田先生:当時の研究の組み立て、工夫したポイント、舞台裏の真実なども含めドキュメンタリータッチで解説しました。ネタっぽいと思われる記述も結構あるのでは?と思いますが、書いてあることは全部真実です。信じて下さい(笑)。我々の功績に端を発して、臭いの原因を分子レベルで解明し、それに応じた消臭法を考案するという新しく確立された研究の流れの実例を幾つか紹介した後、タイムマシンは2018年に戻ります。

 

南野:2018年以降の新しいお話しは“Back to the Present”のパートですね。

神田先生:はい、ここからは2018年以降の新しい話で、現在のデオドラント関連の研究がどこまで進んでいるかをIFSCCでの発表された論文を総説らしくまとめました。最後の “Future Perspective”では、将来への展望を述べていて、ここは再びSFっぽい話になっています。私は昔から何かを書くときは必ず南野先生に査読してもらっていますよね?本作品に関しては「将来への展望に宇宙的視点を加えた方が良いのでは?」とのアドバイスいただきましたので加筆させていただき、より魅力的な将来への展望になったのではないかと自画自賛しています(笑)。

南野:光栄ですが、アドバイスというより感想を述べただけですよ~。民間人が宇宙に行く時代ですしね。

 

南野:IFSCC マガジンに投稿された経緯は?

神田先生:数ある総説の中で、どういう研究経緯をたどってこの技術が存在するのかを後世に伝えることも大事だと思い仕上げたのですが、この作品を最初に執筆を依頼してきた編集長に提出したところ、内容は面白いけれど、これでは他の章とのバランスがとれないなぁという話になってしまいました。そこでIFSCC Magazineの編集長に相談したところ、是非ともIFSCC Magazine掲載させて欲しいと言われ実現しました。IFSCC Magazineの中では総説というよりはIFSCCのフェローが業界での自らの功績をIFSCC会員のために判り易く説明する新しいタイプの読み物という位置づけで登場します。

 

南野:図表なしの英語だけの長文ですが、物語を読んでいる感じで、とても読みやすかったです。

神田先生:ありがとうございます。英文8000ワードで読み応えは十分だと思います。受けを狙ったスターウォーズの有名なフレーズも登場しますのでそれを探しながら読んでいただきたいです。コロナ禍のお家時間が長い中、デオドラント製品の進化と英語の勉強を兼ねて、80年代へのタイムトラベルをお楽しみいただければ幸いです。

南野:そうですね。英語の勉強にもなりますし多くの方に読んでいただきたいですね。個人的には、若い人のために、この小説がマンガ化されるといいな~と思っています。今日は、ありがとうございました。

Dr KANDA 2021 No1 IFSCC Magazine