トピックス2022.02.02
「におい」は昔の記憶を蘇らせる?
1月21日に開催されたJCCオンラインカレッジセミナーで、南野先生と私を含めたJCCエグゼクティブアドバイザー3名で講演を行いました。お陰様でセミナーはなかなか好評で、オンラインセミナーとは思えないほど質問やコメントをいただきました。その中の一つに興味深い質問があったので皆様にもご紹介します。
質問
人の五感の中で、嗅覚(匂い)の記憶が一番印象に残るという記事を読んだことがあります。確かに自分でも、ふと嗅いだ匂いが懐かしいと感じることが多々あります。なぜ、嗅覚が一番残るのでしょうか?
嗅覚は五感の中でも他の感覚と比べて未だに一番謎が多いとされています。確かに五感の中でも昔の記憶に残っている状況や場面を最も生々しく蘇らせるのは嗅覚であり、その鮮明さは他の感覚を凌ぐものだと私自身も実感しています。ではなぜ匂いが記憶と結びついているのでしょうか?その理由のひとつとして考えられているのは、五感のそれぞれが脳のどの部位と繋がっているかということに起因するという説です。嗅覚以外の感覚、即ち視覚、聴覚、味覚と触覚は全て視床とつながっているのですが、嗅覚だけが記憶と感情を処理する部位である扁桃体と海馬に接続されているようなのです。鼻の嗅細胞で匂いが探知されると、そのシグナルはまっすぐに匂いを分析する嗅球へと運ばれてから、扁桃体と海馬という記憶と感情を処理する部位に接続されます。実際のメカニズムはもっと複雑なのでしょうが、香りや匂いが記憶と結びつく理由のひとつは、この嗅覚の特殊性にあると考えられています。脳科学的にみて嗅覚が五感の中で最も鮮明な記憶を呼び覚ますことは理に適っているのですね。匂いが記憶と結びつくように人間は設計されていると考えると、香りや匂いの果たす役割にももっと深い意味があるような気がします。(神田不二宏)