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客員教授からの
お知らせ

トピックス2022.10.20

「祭り」が終わって感じること ーIFSCC 2022ロンドン大会総括ー

3年ぶりにリアルで開催された国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)のロンドン大会が先月無事終了しました。その開催期間中(9/19-22)の様子は南野先生の一連の実況中継さながらのタイムリーなアップデートとして「客員教授からのお知らせ」上でも日々熱く紹介されたことは記憶に新しいところです。世界の化粧品技術者のための最大の祭典が終了し、100人を超える日本からの参加者も無事帰国され、そのうちの何人かから現地での実際の様子も伺うことができました。事前の情報が乏しく、私が一番疑問に思っていたポスターはどのように発表して、質疑応答対応をしたのかも実際に現地で発表された方々に話を聞いて初めて理解をすることができました。現地での運営に対する様々な賛否両論の声が上がっていましたが、初めて参加した若者たちは、最終日のGala Partyを体験してIFSCC大会が「お祭り」と呼ばれている理由がわかったと異口同音に熱く語ってくれました。

 私は、南野先生と一緒に本大会のInternational Advisory Boardの一員として、英国協会に対して少なからず運営のアドバイスをさせていただき、開催期間中はオンラインで大会の様子を極力ライブでフォローしました。、更に現地参加の方々からの事後のヒアリングもしたので、全部ひっくるめて感じたことを述べたいと思います。

まずは何と言っても英国協会には労いの「Good job!!」の言葉を送りたいと思います。確かにケチはいくらでもつけられますが・・・(笑)。参加費は「べらぼうに」高い、ポスター発表者は本当に現地ロンドンまで行って発表する必要があったのか?などなど。ただ一方で、英国協会に対して色々マイナスに働いた要素が多かったことも事実です。中国のコロナ政策によるロックダウンのせいで、中国からの現地参加が見込めなくなり、その対応策としてオンラインとの併設運営を余儀なくされ(おかげでオンライン参加できて助かりましたが!)予算を超過してしまったこと、それまで大会の運営を仕切っていた重鎮が開催直前に辞めてしまい大きな混乱を引き起こしてしまったこと(欧米ではよくある話ですが!)、英国女王の国葬(9/19)と大会のオープニングの日程が重なってしまいイベントの調整におおわらわだったことなど、枚挙にいとまがありませんでした。その中でも久々のリアルの大会を成功裏に終えることができたことは高く評価できるのではないでしょうか?

そして・・・私が気になったことは、本大会における「日本」の存在感の低下です。発表演題の数で最近フランスに後塵を拝していることは開催直前のブログでも紹介しましたが、まだ受賞常連国として演題のクオリティでは先端を走っていると期待していたのです。が、残念ながら・・・1980年にベニスで開催された第11Congress以降2020年の第31回横浜Congressまで常に本大会で一つ以上の「賞」を獲得してきた日本でしたが、この41年にわたり21回続いた受賞記録についに終止符が打たれることとなりました。南野先生の実況中継を通じ別のブログで紹介させていただきましたが、今年はフランスの1報と米国の2報が受賞し、日本が長年温めてきた指定席に座ることはできませんでした。オンラインで視聴していて、確かに日本の発表者からはいつもの「キレ」が感じられず、まさか?という嫌な予感が的中してしまいました。原因は色々考えられますが、やはり他国はテーマの選定自体、トレンドであるSDGsAIを強く意識した先端のものが多く、一方、日本は消費者志向の実用的なイノベーションが多かったこともその要因だと思います。即戦力となり得る日本の技術vs一歩未来を見据えた欧米の研究と言ったところでしょうが、今年は後者に軍配が上がったということだと思います。

あまりネガティブなコメントばかりで終わりたくないので、前向きな話をしましょう。これも開催直前のブログで触れましたが、今回はアカデミアの台頭が目立ってきており、これからは大学も化粧品業界に貢献する機会が増えていくものと考えられます。今年の応用部門の最優秀賞を獲得したのは、米国の名門スタンフォード大学。BASFとの共同研究とはいえ、大学が基礎部門でなく、より消費者に近い下流の部分の応用研究をしていることに驚かされます。色々な意味で研究のボーダーレス化が進んでいることは間違いなさそうです。当校もこの流れをチャンスとして捉え、どんどんIFSCCで発表する機会を持ちたいものです。(神田不二宏)

IFSCC2022 ロンドン大会はオンディマンドでクリスマスまで公開されています。