トピックス2022.11.10
東京藝大の木津文哉先生による表現された顔についての興味深い話がたくさん!
「訓練された観察力と表現力、それを実現するテクニックとイマジネーションといった総合的なバランスによって生み出される。」
今月の顔学オンラインサロンの話題は、画家で東京藝術大学教授の木津文哉先生による「絵に描かれた顔に見られる暗喩」についてでした。
絵描きであるご自分が学んできた、2次元で表現された顔の歴史と実例について、先生が集められた資料を多数ご紹介いただきながら、ファインアートのみならずカウンターカルチャーでの顔表現についても、描画の特徴や表情の差異性など、幅広くお話していただきました。その一部を、日本顔学会理事で企画担当の村上泉子さんよりご報告してもらいましょう。
「GIジョー」(アクションフィギュア)の顔の変遷として、当時の日本人のソルジャーの顔は、どう見ても悪役でなんとなく日本人的なものだったのが、2000年代の顔は特定の日系人、そして最近のものは、中村獅童さん、加瀬亮さんとはっきり分かるものになっているのだそうです。最大公約数的な顔ではなく、どんどんリアルに変化してきている。現在では、いつの何処の誰、と限定されていることがフィギュアの世界では、重要なファクターになってきており、絵画とは違うリアルさが求められているとのことです。
また、「漫画の顔」のメインカルチャーは、何と言っても手塚治虫氏。手塚治虫氏が描かないものとして、野球漫画(巨人の星)やボクシング漫画(あしたのジョー)といった作品が描かれるようになります。さらに、フランスのアニメーターであるメビウスも日本の漫画界に大きな影響を与えており、宮崎駿氏もかなりメビウスの画を研究されたのではないかということです。
今回のご紹介いただきましたプラハの英雄広場の天文時計をモチーフとされた木津先生の作品はたいへん印象的で、この画についてのご説明を聞き、いろんなことを気づかされました。一見3次元に見えるのですが、平な面にアクリル絵の具をはじめいろんな素材を使った2次元の作品です。自分の世界観を表現する、人がやっていないことを考える、他人と違うことを強烈にアピールする、そうしていかないと生き残れないと思い、制作に取り組まれた作品だそうです。
プラハの英雄広場の天文時計をモチーフとされた木津先生の作品、「迷宮」S30号
学生時代に毎日の通学電車の中で人物をクロッキーし、それは何百枚にも及んだとのこと。その訓練された観察力と表現力、それを実現するテクニックとイマジネーションといった総合的なバランスによって生み出されたものだと思いました。そして、今回の話題の一つであったカウンターカルチャーは、多くの芸術家のこのような背景、つまり、自分の世界観は自分で作ることの結果の一つであると感じました。
このように、今回の顔学オンラインサロンも強く印象的な内容となりました。
次回12月もオンラインで顔学サロンを開催します。またまた興味深い内容になりそうです。
客員教授 菅沼薫
■次回 第41回顔学オンラインサロンのご案内
師走の顔学オンラインサロン(12月6日)は、香川大学の柴田悠基先生より、瀬戸内国際芸術祭に出品された作品を核に、風土と作品、土地に根ざすアート、そして顔について、幅広く話題提供していただきます。現代アートの地平を皆様にご覧いただけるのではないでしょうか。
一般、非会員でも参加できます。多くの皆様のご参加をお待ちしています。
日時:2022年12月6日(火)20時から(1時間半程度を予定)
会場:Zoomというオンライン会議システムを用いておこないます。
【話題提供】
テーマ:地域の顔 サイトスペシフィックな芸術の表現方法
話題提供:柴田悠基先生(香川大学創造工学部講師 現代アート)
趣旨:香川では瀬戸内海の島々を舞台に国際的な展覧会である瀬戸内国際芸術祭が3年に一度開催されます.瀬戸芸はその土地でしか作る/観ることのできない作品,すなわちサイトスペシフィックな作品が多く出展されます.今回は瀬戸芸2019で発表した2つのサイトスペシフィックな演劇作品を中心にお話しいたします.
■ 「顔学オンラインサロン」は、毎月1回火曜日の夜20時から90分、オンラインZoomで開かれています。日本顔学会の会員でなくても無料で参加できます。「顔」に関する様々な話題提供者の話を視聴したあと、参加者同士気軽に意見交換することができます。みなさまもぜひご参加ください。