トピックス2023.07.18
集中線は驚きを強める ―マンガ表現の心理学
顔学オンラインサロン(第48回)7月11日は、本多明生先生(静岡理工科大学情報学部准教授)に、マンガの効果線がどのように顔印象に影響を与えているかお話いただきました。
始めるにあたって、人物の印象評価体験からスタートしました。本多先生から、男女4名の顔画像に異なる背景(白背景、高層ビル群、夜の繁華街)が重なった画像がランダムに映し出されました。それぞれ人物のぱっと見の印象を良いか悪いか点数で答えるものです。夜の繁華街が背景の場合と高層ビル群の風景では、同じ人なのに印象が違って見えました。このように、背景が印象に影響していることを実感させられたところで、そこから本題に!
マンガでは、キャラクターの動き、心理描写等を表現するために効果背景と呼ばれる演出技法が使用されています。とくに、人物の顔の周囲にもさまざまな種類の線描が描かれています。例えば、漫画の主人公の顔がアップになって、その周りに放射状に線が描かれているなどです。本多先生は、効果背景の一種である放射状に描かれた集中線に注目して、線画表情の感情認知への影響を実験的に調べたそうです。実験には、背景として「効果線なし、集中線、縦線、横線」の4種類と線画表情「喜び、悲しみ、怒り、驚き、中性、あいまい」の6種類を合わせた(図1 研究に用いられたマンガの効果線と顔印象の図)を用い評価したところ、集中線がある場合、驚き感情の認知への影響が有意にあり、驚きがより強調されることが研究で示されたということでした。情報工学分野での心理学研究は、「今を生きる人間学」という考えから様々に取り組んでいらっしゃるそうで、今後の研究に注目したいと感じました。それにしても、プロのマンガ家たちは、人間の視覚や錯覚をうまく掴み、心理作用を考えて効果線や背景を巧みに利用していると思うと「さすが!」と言いたくなりました。
次回8月の顔学オンラインサロンは、「夏の夕べの顔学会会員によるオンラインサロン」ということで、応募いただいた顔学会会員2名から話題提供していただきます。どんなサロンになるか楽しみです。会員でない方も参加できます。
【客員教授 菅沼 薫】
【顔学オンラインサロン(第49回)のお知らせ】
8月の顔学オンラインサロン(8月8日)は、少し趣向を変え『夏の夕べの顔学会員によるオンラインサロン』と題して、会員の方に話題提供をしていただく企画とさせていただきました。先日、オンラインサロン参加者のみなさまに話題提供したい、是非お見せしたいという自身のお仕事、あるいは趣味から発想された顔学への話題提供にご応募いただきました方の中から、今回は2名の方にお話ししていただきます。
【日時など】
日時:2023年8月8日(火)20時から(1時間半程度を予定)
会場:Zoomというオンライン会議システムを用いておこないます。
【話題提供】テーマ:顔学と私・顔学会について思うこと
話題提供1:金知栄(キム・ジヨン)(京都芸術大学・大学院・修士2年)
趣旨:今学校で取り組んでいる研究テーマ「絵本における群衆の表現」、制作テーマ「祭りを題材としたイラストレーション制作」と2021年12月から2022年1月かけ、(韓国)ブサン警察庁で行われた自身の初個展(似顔展)、肖像画に関して私が持っている考え方を紹介します。
話題提供2:奈部川貴子(美容ジャーナリスト/ 鍼灸師・フェイシャルセラピスト)
趣旨:顔のリフレクソロジー、表情マッサージなど「若い顔」を維持するセルフケアについて、メディアや書籍を通してアドバイスしています。顔は内臓を写す鏡、顔ツボ反射区の地図フェイスマッピングや簡単なツボ押しレクチャーを交えながら、どのように顔と向きあっているのかをご紹介します。
【客員教授 菅沼薫】