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化粧品製剤科学研究室
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Prof コラム2023.11.08

【論文のご紹介】化粧水やクレンジングの重要技術「マイクロエマルション」の解説

みなさんこんにちは。
化粧品研究室の渡辺です。

化粧品を高性能にするためにはどうしたらよいでしょうか?それを考えるうえで重要な「コロイド界面科学」を対象とするオレオサイエンス誌に「マイクロエマルション」に関する解説記事(総説)が掲載されました。
今回の総説は「新基礎講座」という企画の一部として依頼されたもので、入門者向けの記事になっています。この依頼を受けて本学の学生さんたちを頭に思い浮かべながら、全力でわかりやすく書いてみましたので、専門外の方もぜひ読んでみてください。(無料で公開されています。リンクをクリックするとPDFに飛びます。)

この総説を読むにあたって知っておくとわかりやすくなるポイントをご紹介します。

1.マイクロエマルションは溶けないもの(油など)を界面活性剤を使って透明に(水中に)溶かし込んだ溶液で永遠に分離しない安定な系
2.溶けないものを大量に溶かすためには界面活性剤の親水性と親油性を釣り合わせる
3.バイコンティニュアスマイクロエマルション相、スポンジ相と呼ばれる興味深い形(界面活性剤が連続構造を形成)に界面活性剤が集合した場合に各種機能性(可溶化力、洗浄力など)が極大になる
4.化粧品としてはメイク落とし(ローション、オイル、リキッドなど)や化粧水に使用されている

 

 

図 マイクロエマルションの会合構造のモデル図

 

実際にわたしが資生堂時代に行った研究によるマイクロエマルションの例も3つ紹介しています。上の図のaを除く3つのタイプのマイクロエマルションを研究して、各種メイク落とし(b クレンジングオイル、c クレンジングリキッド、d クレンジングローション)処方を作成しました。どれも商品として発売されています。

特にcを使用したクレンジングリキッドは当時世界で初めての製品で、数年たってほかの会社からも参入があり大きなマーケットを作りました。最近、学内で行った実習では、bのクレンジングオイルを持参して評価した学生さんが、他の商品と比較した際の落ちの良さにびっくりしていました。これらは相平衡研究と呼ばれる手法を使ってつくりあげたもので、それぞれの相図も総説で紹介しています。

こういった化粧品研究の一端を知っていただきたいと考えブログを作成しました。
このブログではわたしが執筆した論文について、読み方や研究の裏話などの解説を(可能な限り)定期的に行っていく予定です。
参考にしていただければ幸いです。

 

渡辺啓(化粧品科学研究室 教授)