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客員教授からの
お知らせ

トピックス2024.02.06

HC塾150回記念講演会 「総合知から俯瞰知へ」 問い続けることに意義がある

 まずHC塾とは、原島博先生(日本顔学会元会長で東大名誉教授)の私的な塾です。ホームページには、「HC塾とは、塾長の原島が勝手に好きなことを話して、その後懇親を深める。それだけの塾です。」とあります。毎月1回行われているHC塾は、202423日に150回目を迎えました。会場の東京大学工学部2号館の教室には、老若男女の大勢の方が集まりました。

講演時の原島博先生

 この日のテーマは「俯瞰知への道―HC塾で試みてきたことー」 ということで、2時間ほどのお話の前半は、「僕は人生をどう生きてきたか」の話題で、日本顔学会の生みの親でもある原島博先生の生き様、思いに触れました。原島先生は、定年まで東京大学大学院情報学環と工学部に属し、ヒューマンコミュニケーションエ学、つまり「人と人の間のコミュニケーションを技術の立場からサポートする」として研究を続けてきた方です。HC塾を始めたのが20116月、専門以外の自分が興味を持ったテーマを自分なりに調べ、考え、まとめ、それを誰かに話し、話し合う場にしたいと考えてのことだそうです。私もこれまで何度かHC塾に参加したことがありますが、今日まで、そしてこれからもHC塾を続ける原島先生の努力とパワーに驚かされます。

後半は、「俯瞰知への旅」ということで、万学の祖のアリストテレス、万能人であるレオナルド・ダ・ヴィンチ、ライプニッツ、デカルトと偉人の逸話で始まりました。かつての偉大な科学者のように、もともと「知」とは総合知だったが、全てを網羅する能力や技術の取得の難しさ、科学の対象が複雑になったことなどから、現代のように細分化された専門知への移行が進んできています。しかしながら、それらは部分的な課題に対応できても、個々の専門知だけでは解決しない大きな課題が山積みになっているのが現状です。そのため、個ではできないことを、広く、異なる分野から専門知が集まることで解決できないかと考えたのが、学際的であること、日本顔学会や東大における学環の創設もそのような考え方からだったそうです。

ただし、「専門知を集めて統合した全体知は自分の思う総合知ともいえず、まだ何かが違う!」という思いもあり、「俯瞰知」ということを思いつかれたようです。「俯瞰知」とは、一人の人間としてトータルに生きる知であり、自らを相対化する知であり、大きな世界に位置づけられる知であるということで、しいていうなら「鳥瞰知 (Bird’s eye view)」に近い感じだそうです。HC塾の際には、興味あるテーマの入門書的な資料を眺め、キーワードをまとめ、自分なりに作図して関係性を見つけるようにされたとか。それは、原島先生自らが鳥になって、テーマの空を飛んでいるような感じなのでしょう。そして、HC塾を始められてから経験されてきたことは、原島先生の知の旅なのです。その証拠に、「俯瞰知は旅する知」であり、自分が作った図は知の旅をするためのMAPなので「知図」だと話されていました。それも、とても楽しそうに。この旅は当分続けること、安易に解答を求めないこと、考える楽しさを奪わないでほしいともおっしゃっていました。講演後の質疑応答も活発に行われ、参加者全員が楽しく、知の刺激を受けた快い日となりました。

また、来月もHC塾を開催されるそうです。誰でも事前に申込をすれば参加できます。詳しくはHC塾のHPをご覧ください。 

さらに、HC塾の講義録が「俯瞰する知」全10巻(工作舎)として刊行されます。まず、第1巻「情報の時代を見わたす」と第2巻「宇宙138億年から学ぶ」が、20244月に配本されるそうです。詳しくは工作舎のHPをご覧ください。 

【客員教授 菅沼 薫】

 

講演前の原島博先生と筆者