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Cosmetic Science最新のトピック

客員教授からの
お知らせ

トピックス2025.09.12

IFSCCカンヌ大会(プレーヤーで挑戦!!)

来週、915日~18日に南仏カンヌにて、化粧品の国際学会(IFSCC)が開催されます。本校には、IFSCCに様々な立場で関わり、活躍されている先生方が多数在籍されています。

私は企業に所属し、化粧品研究に従事する傍ら、本学の客員教授として教育にも携わっております。今回は企業研究者として、まもなく開催されるカンヌ大会に向けて、プレーヤーとしてどのように準備を進めてきたかをご紹介したいと思います。

IFSCCは世界を3つのゾーンに分け、ゾーンごとに持ち回りで開催国が決定されます。その中でもフランス開催は、世界中の研究者が注目する特別な機会です。今回のカンヌ大会も前評判が高く、非常に激しい競争が予想されていました。私たちもこの大会を一つの大きな目標とし、計画的に研究を進めてきました。

南野先生のブログにもあるように、今回の大会には1,151件の応募があり、フランス協会による審査の結果、16件がリジェクト、68件が口頭発表、915件がポスター発表として採択されました。私たちの研究チームからは3件を応募し、1件が口頭発表、2件がポスター発表として採択され、まずは大きな関門を突破することができました。

企業研究には、大学での研究とは異なる側面があります。学術的な価値を重視しつつも、企業としての商業性も同時に追求していく必要があります。ただし、発表内容そのものに商業的要素を含めることは避けなければなりません。一方で、発表の周辺では広告・宣伝効果を意識した動きが見られるのも、化粧品業界ならではの特徴です。

私たちの研究も、純粋な基盤研究であると同時に、商品化を見据えたものであり、発表内容と商品開発との関連性を常に意識しています。商品化が先行し、発表が後になる場合は、通常の新製品開発の流れに沿って進めることができますが、発表が先行し、商品化が後に続く場合は、後追いで商品計画が立案され、急ピッチで商品化が進められることになります。

企業研究の特徴的な動きとして、発表要旨が大会開催の数週間前に公開される点が挙げられます。公開された時点で、その技術は「公知の事実」となります。つまり、新しい知見については、公開前に特許出願を済ませておく必要があります。複数機関との共創研究であれば、成果に対する権利の主張も多様であり、知的財産の持ち分比率などについての調整が必要となります。これらの調整は研究者同士ではなく、知財専門のメンバーが中心となって交渉を行います。

また、マーケティング部門の動きも活発になり、発表による露出効果を広告に活かそうとする動きも見られます。企業研究では、研究成果を最大限に活用し、技術を広くアピールしたいという思いが強くあります。真理の探究に全力を注ぐ一方で、その成果を期待し、支えてくれる多くのメンバーとともに、発表に臨んでいます。

私たちの研究チームは、このテーマについて、ぎりぎりまで何度も熱い議論を重ねてきました。得られた成果を胸に、世界中の化粧品研究者の皆様に問いかけ、私たちの研究の意義を共有できればと考えています。                      (前山 薫)