閉じる

Cosmetic Science最新のトピック

客員教授からの
お知らせ

トピックス2026.01.27

講演会レポート(ジャカルタ/ジョグジャカルタ 2026年1月21〜22日)

2026年1月21〜22日にかけて、ジャカルタおよびジョグジャカルタの2都市にて化粧品技術者向け講演会を実施した。両会場には20代を中心とした若い技術者が多数参加し、処方設計、皮膚科学、安定性評価といった基礎から応用まで貪欲に学び取ろうとする姿勢が非常に印象的であった。インドネシアは平均年齢が約30歳と極めて若い人口構成を持ち、化粧品市場も今後さらなる拡大が見込まれる。その成長を支える若い技術者たちとの交流は大変意義深く、彼らの真剣な姿勢は同国の産業発展を確信させるものであった。

こうした背景の中、現在インドネシアでは40代の日本人起業家が化粧品原料の商社を立ち上げ、多くの原料メーカーからの支援を受けながら事業を推進している。現地に根ざした原料供給体制を整え、インドネシア市場の品質基準や宗教的要件に適合した原料調達を進めている点は業界内でも注目されている。今回の講演は、その起業家から相談を受けたものであり、私自身も微力ながら現地技術者の知識向上に寄与したいとの思いで登壇した。

インドネシアはイスラム教徒が多数派を占めつつ、カトリック教徒も一定数存在する多宗教国家であり、人々の生活には宗教的価値観が深く根付いている。そのため化粧品開発において ハラール対応は絶対条件であり、単に禁忌成分を避けるだけでは不十分である。原料由来、製造設備、工程管理、流通に至るまで、すべてがシャリーア(イスラム法)の基準に則していることが求められる。特に アルコールフリー、ポークフリーは必須で、一般的に動物由来が用いられる乳化剤・保湿剤などについても植物由来・合成由来原料を活用した代替処方が必要となる。講演ではこれら宗教要件を満たしつつ、高機能性と使用感を両立する処方設計への関心が非常に高かった。

さらに、インドネシア特有の 高温多湿環境を踏まえた処方設計も重要なテーマとして挙げられた。特に年間を通じて需要の高いUVケア製品では、耐水性や皮脂耐性、白残りの軽減、快適な使用感など、多面的な技術要件を満たす必要がある。「ハラール × 高機能UV × 快適な使用感」を兼ね備えた処方は、現地メーカーが最も求める領域の一つである。

今回の講演を通じ、若い技術者たちは宗教的要件、気候条件、生活文化といった複合的背景を理解し、それらを踏まえた独自の化粧品技術を確立しようとする強い意欲を示していた。今後もインドネシア市場の成長は継続すると見込まれ、技術者育成と国際的な原料供給体制の強化はますます重要になるだろう。今回の講演が、現地技術者との知識共有とネットワーク構築を深める一助となり、未来の製品開発や協業の広がりにつながることを願っている。

                                     前山 薫