トピックス2022.02.09
菅沼薫のワンポイント講座 「化粧品トレンド研究の基本」(11)トレンド調査の注意点
(11)トレンド調査の注意点
「化粧品トレンド研究の基本」もあと2回になりました。今月はトレンド調査の注意点について、まとめたいと思います。前回、「社会情勢も踏まえて、トレンドを牽引する新しい動きを捉えることから進めると良いと思います。」と締めくくりました。しかしながら、新しい動きを捉えることが最も難しいことです。それは、だれが教えてくれるのか、どこで分かるのか、知りたいのはやまやまだと思いますが、だれも教えてはくれません。そのために調査が大事になります。
調査方法には、アンケート調査、媒体調査、定点観測、行動観察などがあります。
アンケート調査するときには、調査の目的を明らかにし、その目的に合う調査項目の検討が必要です。しかし注意しなくてはいけないことは、ターゲットがアンケートの内容を正しく理解しているかどうかにあります。調査する方は専門集団であることが多く、言葉の使い方において、一般の生活者との間にズレがあることが多くみられます。アンケートを作成する場合には、一般の生活者が理解できる文章、表現になっているか事前に充分に検討してください。また、ターゲットの絞り方に注意が必要です。生活スタイル、金銭感覚、消費行動などによって、同年代でも全く異なる意見を持っていることが多々あります。
媒体とは、雑誌や新聞、TVなどのマスメディアとSNSにように個人データの集合体であるネットワークメディアがあります。マスメディア情報の多くは裏付けをとり、情報の正確さ、質が保たれていますが、ネットワークメディア情報は、個々の能力に依存することになり、信頼性は発信者が誰であるかによって大きく異なります。
定点観測においては、同じ場所、同じ時間で繰り返し行います。定点観測で気を付けることは、場所と時間だけでなく曜日も同様にすることです。それは、数年にわたり渋谷でのヘアスタイルの定点観測の画像解析を行っていた時のこと、ヘアスタイルに大きな変化が見られたのでトレンド変化かと思ったところ、調査日が平日から土曜に変わっていたことが分かりました。曜日によって街を歩く人が異なるため、そのような相違が生じました。なお、ファッションの定点観測では、渡辺明日香先生(共立女子大学)の原宿・渋谷・銀座での27年間調査が有名です。その内容がうかがえる資料が、NHK出版よりテキスト「時代をまとうファッション」として発行されているので参考にすると良いでしょう。
そして、調査で得られたデータの解析が最も重要です。データを整理し、分類し、まとまった群のキーワードを探り、動きの変化を見える化します。それらを繰り返しているうちに、トレンドを引っ張っているもの、人が感じられるようになり、どこへ向かっているかも見えるようになるでしょう。
◆トレンド調査の注意点まとめ
- ターゲットが理解できる表現を用いる
- ターゲットの選択、絞り方が大事
- メディアの発信元を探る
- 同場所、同時間、同曜日での観測を年単位で続ける
- データを整理し、分類し、キーワードを探り、動きの変化を見える化する
今後の掲載予定
4月.トレンド研究とは
5月.化粧品トレンドの特徴
6月.肌悩み調査とトレンド
7月.不易流行
8月.化粧品開発の歴史
9月.化粧品トレンドと社会背景
10月.メイクアップの変遷
11月.スキンケア化粧品の変遷
12月.パッケージデザインの変遷
1月.化粧品トレンドの掴み方
2月.トレンド調査の注意点←今月はここ。
3月.トレンド予測力の養い方←来月は最終回です。