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Cosmetic Science

客員教授からの
お知らせ

トピックス2022.04.02

たかが化粧品, されど化粧品 -ウクライナ情勢がもたらす女性が「美しくある権利」の侵害ー

多くの企業や学校が新年度を迎え、フレッシュな希望に満ち溢れている4月。ですが、「もしかすると第7波が始まってしまったかも?」という話もあり、まだ終息しそうにない新型コロナの猛威、そして世界に目を向けると先が見えないウクライナ情勢など、残念ながら明るいニュースばかりではない今日この頃です。

ご存じのように今回のウクライナ侵攻で西側諸国や日本はロシアに対して今までにない厳しい経済制裁を加えています。規模的にもそれほど効果があるとは考えにくい化粧品業界ですら制裁に加わっていることが、今回の世界の民主主義陣営のプーチン政権への批判の本気度を示しているとも言えます。セフォラ、エスティ―・ローダー、ロレアル、J&Jやユニリーバなど世界の名立たる化粧品関連企業が、既にロシアからの当面の事業撤退を表明しています。その内容は各社それぞれで、例えばJ&Jは化粧品を含むパーソナルケア製品は撤退するが、ライフラインである医薬品や医療器具はオペレーションを続けるようです。海外の化粧品企業の制裁の内容についてもっと詳しい情報を知りたい方は下記リンクをご参照下さい。 

Cosmetics & Toiletries
[update]: Sephora, Estée Lauder, L’Oréal, J&J & Unilever Cease Operations in Russia


ちなみに資生堂もロシアへの化粧品輸出とロシア国内での広告宣伝を全面中止したそうです。このように世界が一枚岩となって「ノー(No!!)」を突き付けることは重要だと思いますが、一方で何の罪もないウクライナやロシアの人々の生活が益々苦境に立たされることには本当に胸が痛みます。東日本大震災の時には、「化粧をすることで明日への前向きな活力を見出すことができた」という多くの女性の声が、当時化粧品会社の研究所に居た私の耳にも届いてきました。同じことが現在のロシアとウクライナについても言えるような気がします。化粧品の供給を断たれた罪のないウクライナやロシアの女性は、一体どうなるのでしょう?今後どのように展開しようと勝者など誰一人としていないこのような愚かな戦争に一日も早く終止符が打たれることを祈って止みません。(神田不二宏)