トピックス2023.01.24
顔学トピックス
見た目と個性 ―リベラリズムから見たルッキズム
2023年最初の顔学オンラインサロン(1月17日)は、原塑(はら さく)先生(東北大学大学院文学研究科総合人間学専攻哲学分野准教授)によるルッキズム批判について、リベラリズム(自由主義)哲学の視点から話題提供していただきました。哲学がご専門の原先生は、同じく東北大学の阿部恒之先生との対話を通して考えを深めてこられたということで、サロンの進行を阿部先生にお願いしました。
ルッキズム(外見至上主義)は、ある人物の価値評価をもっぱら見た目の美醜によって定めるようとする考えや態度のことです。原先生は哲学的な視点から、このルッキズムの要素を分析、多くの顔や外見に関する文献も読み解きながら、ご自身が考えるルッキズムと社会についてお話しされました。(図1)様々な文献も参考にされた重厚なお話しなので、短い文章で簡潔には言えないですが、私なりに概要を以下のようにまとめてみました。
ルッキズムには2つの側面があると考えられる。例えば、人種や民族などのように差別につながるものは間違っているし、批判に値する。もう一つの個性や個人(ほんとうの私)という面からみると、服飾や化粧による装いなどは個性の自由な展開として、その人の幸福の主要な要素となるので問題ないと考えられる。(図2)しかしながら、とくに大学のミスコンやそのイベントにスポンサーがつくような競争の在り方には問題があるし、若年層が外見ばかりに囚われて、内面の教養を怠ることは問題と考えられる。
美容業界の存在は、化粧品会社が掲げるメッセージにも表れており、例えば「あなた自身のなかにある美しさを引き出す、、、」や「一人ひとりが自身の内にある可能性を発揮し個性を輝かせること、、、」は、個性や個人(ほんとうの私)を意識したもので、差別につながるルッキズムとは異なり、大変良く考えられている表現と思うし、全般的に美容業界の存在は人々の美的表現(個性)の形成を生かし、幸福へ導く手伝いをしているので批判されるルッキズムとはいえない。ただし、美容業界が画一的な美を推奨することで、個人の意識に影響を及ぼすこともあるということは考えられる。(図3)そこで、いくつかの対抗手段は、差異化への対抗としてほんとうの私の確保、見た目評価への表出の抑制、美容手段の安全性の確保となると考えられる。
今日、社会問題の一つとなっている「ルッキズム」がテーマなので、50名近い方が参加され、関心の高さが伺われました。お話を聞いて、ルッキズムへの対抗策として考えられるのは、ありのままの自分に自信を持つということと感じました。また、化粧品の存在や表現、発信についても、社会の状況を見極めることが重要と改めて感じる機会となりました。
このように,今回のオンラインサロンも刺激的な内容となりました。
次回2月7日は、「Zoom席描き似顔絵、新春似顔絵バトル」ということで、様々な顔の表現方法に出会うことが出来そうです。モデルになってくださる方も募集中です。
顔学オンラインサロンは、夕食後に気軽に語り合う場になっています。非会員の方も無料で参加できます。ぜひご参加ください。
【客員教授 菅沼薫】
■次回 顔学オンラインサロン(第43回)のご案内
日時:2023年2月7日(火)20時から(1時間半程度を予定)
会場:Zoomというオンライン会議システムを用いておこないます。
似顔絵制作の実験的な試みです。斎藤忍氏の進行により、顔学会会員6名の似顔絵作家の方々に、オンラインでその場で席描きの似顔絵を仕上げていただきます。モデルさんと6人の似顔絵作家の皆様の個性のぶつかり合いを、現場でお楽しみいただき、顔について改めてお考えいただく機会となれば幸いです。多くの皆様のご参加をお待ちしています。
【話題提供】
テーマ:『 Zoom席描き似顔絵、新春似顔絵バトル 』
話題提供:斎藤 忍 (尚美学園大学 講師)
似顔絵制作:宇田川 のり子、 阪西 明子、 高橋 エツコ、中野 英明、 吉村 まゆみ、 松永 伸子
趣旨:似顔絵の席描きはモデル1人(あるいは数人)を1作家が描くことが普通ですが、今回、1人のモデルを数名の似顔絵作家が同時制作するZoom画面を通じたオンライン席描きを行います。1人のモデルを1作家が描く場合、完成した1枚の似顔絵作品こそがモデル本人であるかのように錯覚することがあります。モデルは時に、その似顔絵が自分であることを認めたくない、納得がいかない、モヤモヤする、などという気分になることもあります。しかしそれは1作家が描いた1枚の絵に過ぎません。今回の「Zoom席描き似顔絵」では、1人を複数の作家が描き、それぞれが違った角度、異なったアプローチによる、多様な表現の似顔絵作品が生成されることになります。
モデルさんやギャラリーの皆様は、「こういう見方もあるんだ」 「こんな風に見えるんだ」 「こんな顔をすることもあるんだ」 というように、顔を、客観的、俯瞰的に見つめ直すきっかけになると思います。
- モデルさん募集—似顔絵を希望される方は、当日、Zoom画面越しに挙手をお願いします。
また、これ以外のギャラリーとなられる皆様は、モデルとなった方々が、似顔絵作家たちによって料理されていく様子を楽しんでいただけますとともに、並行して、「席描きとは?」 「強い女性3人☆似顔絵のレビュー」 「各作家のSNSページの紹介」等も解説していこうと思います。
■ 「顔学オンラインサロン」は、毎月1回火曜日の夜20時から90分、オンラインZoomで開かれています。日本顔学会の会員でなくても無料で参加できます。「顔」に関する様々な話題提供者の話を視聴したあと、参加者同士気軽に意見交換することができます。みなさまもぜひご参加ください。