閉じる

Cosmetic Science最新のトピック

客員教授からの
お知らせ

トピックス2023.10.14

プラスチック廃棄物から石鹸を作る!? 新しいアップサイクル技術

ほぼ毎日メールで届く米国Allured社の”Cosmetics & Toiletries”の電子版ですが、つい最近目が釘付けになったタイトルの記事がありましたので紹介したいと思います。そのタイトルはVirginia Tech Chemists Create Soap from Plastic Wasteで、Virginia Tech(米国のバージニア工科大学)の化学研究者たちが、プラスチック廃棄物から石鹸を作ることに成功したという記事です。

記事によると彼らは、ポリエチレンの構造が脂肪酸の構造に似ていることに着目し、食品容器やポリ袋を構成する長鎖の炭素化合物を加熱した後、急冷することにより石鹸や洗剤に使用できる界面活性剤を生成する新しいアップサイクル技術を開発したとのこと。具体的には、ポリエチレンを温度勾配熱分解という技術を用いて加熱すると、脂肪酸に変換することができ、これに更に幾つかの工程を加えたところ、プラスチックから初めて石鹸を作ることができたそうです。この技術はポリエチレンのみならずポリプロピレンにも、また、様々な種類のプラスチックを分離せずに混合物の状態のままでも適用でき、触媒や複雑な工程も要さないとのことです。

不用品や廃物を再利用して付加価値の高い商品を作り出すアップサイクルは、現在化粧品業界でも注目されていますが、その多くは食品加工の残りものから有用な成分を探すというレベルです。天ぷら油から石鹸をつくるということですら商業化には至っていない現状では、実用化へはまだまだ課題もあり、時間もかかるのでしょうが、事業化できた暁には素晴らしいSDGsの成果が得られることは間違いありませんね。このような粗削りであるものの夢と将来性のある技術がIFSCCの場でもどんどん発表されることを願ってやみません。詳しくは以下のリンクをご参照下さい。開発者がなぜこの研究を思いついたかというビデオもありますのでご覧ください。やっぱり最初はヒラメキということです!(神田不二宏)

Virginia Tech Chemists Create Soap from Plastic Waste (C&T)

An unexpected way to upcycle: Plastic waste transforms into soap  (VT news)

From Sparks to Breakthrough: Upcycling plastic waste into usable materials with Greg Liu & his lab (VT news)