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Cosmetic Science

客員教授からの
お知らせ

トピックス2024.02.17

日本顔学会は「ふつうの学会」ではない、「楽しい」が合言葉! 楽しさ共有の仲間を増やし、社会にも波及する

今年2回目の顔学オンラインサロンは、213日(火)、2024年より日本顔学会新会長となられた阿部恒之先生(東北大学)に、「私の初心と所信」と題して、これまでのご研究、顔学会の今後の展望についてお話しいただきました。

講演表紙と阿部恒之先生

阿部先生が「顔」に興味を持ったのは大学3年のレポート作成のときで、きっかけは車のフロントデザインに顔があると気が付いた時だそうです。顔の特異的な記憶現象は、「顔そのものではないが、顔みたいな刺激でも生ずるのか?」という疑問から、様々なものに見える顔の面白さに魅せられたとか。その後、大手化粧品会社に就職し、心理学をベースにした化粧科学研究を続けられました。その中には、エステティックマッサージによる心理的効果の研究、ストレスホルモンを分泌する「心のボタン」ということで、感情(怒り・恐怖)や行動(運動、発表、試験など)とアドレナリンやコルチゾールなどのストレスホルモン成分の変化について、さらには、化粧心理学の一環としてメーキャップを扱い、心理的効果などエビデンスのある化粧の効用について発信されました。また、顔の類似性実験から抽出した顔の形態座標「子供―大人」、「直線―曲線」の2軸で区分けされる4象限が、「キュート」、「フレッシュ」、「クール」、「やさしい」という印象と結びついていることを見出し、狙った印象になるためのメーキャップ支援ツール「顔だちマップ」を開発されました。大学に移った後、この形態と印象の結びつきの関係を研究し、「擁護―依存」、「敬遠―親近」の感情が影響していることを明らかにされました。これらの阿部先生らによる研究は、私も含めて化粧品に関係する技術者・研究者にとっても有難い情報で、化粧品開発や化粧施術の意義を強く確信することが出来るものです。

母校の大学に移られてからは、感情心理学という看板を掲げていたものの、指導を求める学生の多くは化粧や顔に興味を持っており、現在の顔学研究にも繋がっているそうです。

そして、日本顔学会の第5代会長としての所信は、「顔」に関する様々な分野の人が集まる日本顔学会は「ふつうの学会」ではないということ、年1回開催の大会(フォーラム)を含めて、各種のイベントに集まる人々の笑顔が印象的で、この学会は「楽しい」が合言葉!と確信したそうです。そこで、今後もこの楽しさを共有し、仲間を増やし、社会にも波及することを信条にしたいと話されていました。

2025年には日本顔学会は創立30周年を迎えます。昨年まで6年間4代目の会長をしていた私としても、理事の一人としてさらに楽しい学会にしていきたいと、お話を聴きしていて心を新たにしました。

次回の顔学オンラインサロン(35日)は、岩手県立大学社会福祉学部教授の桐田隆博先生に話題提供いただきます。心理学者として顔表情の認識過程について研究されていらっしゃいます。怒りや恐怖の表情は、幸福より遅く認識される一方で検出は早いそうです。

ということで、またまた興味深いお話が伺えると思います。お気軽にご参加ください。

【客員教授 菅沼 薫】

 

【顔学オンラインサロン(第55回)のお知らせ】

顔学オンラインサロンは夕食後に気軽に、顔そして顔学について語り合う場です。

日本顔学会の会員でない方の参加も大歓迎しています。

 

日時: 2024年35日(火)20時から(1時間半程度を予定)

会場: Zoomというオンライン会議システムを用いておこないます。

テーマ: 怒りと恐怖の表情をめぐって

話題提供: 桐田 隆博 (岩手県立大学教授)

趣旨: 私の研究の守備範囲の中で、最も(熱心にと言いたいところですが、実際にはダラダラと)時間をかけているのは、顔表情の認識過程です。表情には、一般的に、幸福・悲しみ・怒り・恐怖・嫌悪・驚きという6つのカテゴリーがあり、これらの表情は文化や言語にかかわらず普遍的に表出され、そして認識されると考えられています。したがって、表情認識過程では、まずもって、これらの表情が対象となるわけですが、この表情認識過程を検討する上で、大きく立ちはだかる問題があります。それは、6つのカテゴリーのうち、最も正確にそして素早く「認識される」のが幸福なのですが、その一方で、最も素早く「検出される」のは幸福ではなく、怒りあるいは恐怖であると主張する研究者が少なくありません(ハッキリ言うと多いのです)。検出とは対象が見えるか見えないかの段階に用いられる用語で、その検出に基づいて意識的認識に至ると考えるのが筋です。したがって、検出が早いのであれば、認識も早くなるはずですが、実際には怒りや恐怖の表情に対する認識は遅く、しかも、不正確です。怒りや恐怖の表情における検出と認識の逆理を解決することは、表情認識過程を考える上で避けて通れません(とはいえ、実際には、避けている人、見て見ないふりしている人が多いのです)。今回は、この、いわば「鬼門」をどのように突破しようと考えているのかについてお話したいと思います。

 

【顔学オンラインサロン申込み