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Cosmetic Science

客員教授からの
お知らせ

トピックス2024.03.16

怒りや恐怖の表情は、認識は遅いが検出は早い!

今年3回目3月5日の顔学オンラインサロンは、テーマ「怒りと恐怖の表情をめぐって」と題して、岩手県立大学社会福祉学部教授の桐田隆博先生にお話しいただきました。桐田先生は、心理学者として顔表情の認識過程について研究されていらっしゃいます。怒りや恐怖の表情は、幸福より遅く認識される一方で検出は早いそうです。

資料表紙と桐田隆博先生

桐田先生が最も時間をかけて研究されているのは、顔表情の認識過程だそうです。表情には、一般的に「幸福」・「悲しみ」・「怒り」・「恐怖」・「嫌悪」・「驚き」という6つのカテゴリーがあります。その中で、最も正確にそして素早く認識されるのが「幸福」です。「幸福」とは、歓びや好感を示す笑みや笑顔の表情で、「幸福」が素早く認識される現象は多くの心理学実験に共通するところだそうです。そして、最も素早く検出されるのは「幸福」ではなく、「怒り」あるいは「恐怖」であると主張する研究者が少なくないそうです。当サロンでも、多くの国内外の心理学実験から得られた知見を披露いただきました。

お話の流れ

しかしながら、桐田先生は認識検出の違いについての研究に疑問を持たれたそうです。それは、検出とは対象が見えるか見えないかの段階に用いられる用語で、その検出に基づいて意識的認識に至ると考えるのが筋というわけです。本来、検出が早ければ認識も早くなるはずですが、実際には「怒り」や「恐怖」の表情に対する認識は遅く、しかも、「恐怖」は「驚き」と混同されやすく判断が不正確だったそうです。また、怒り顔には相手に脅しをかけることで交渉を有利に運ぶ機能が、恐怖顔には幼児的印象を通して相手からの攻撃行動を抑制する機能があるともおっしゃっていました。「怒り」や「恐怖」の表情における検出認識の逆理を解決することは、表情認識過程を考える上で避けて通れないということで、感覚刺激と脳内の伝達機構なども踏まえて今後も取り組んでいきたいそうです。

お話をお聴きして、日頃、何気なく感じていることを実験によって証明することは大変に難しいことだと思いました。私たちは、相手の感情を、相手の顔表情から読み取っています。表情から感情を予測できるのは、生まれてからの多くの学習によるものだとは思いますが、危険を察知するために、怖そうな人・ものには近づかないように無意識に行動したりしています。その気づきが検出で、行動を起こそうとする意識が認識なのか、専門的に心理学を学んでいない私には分かりませんが、今年11月フォーラム顔学2024は岩手県盛岡で開催なので、

実行委員長である桐田先生にお目にかかった際にいろいろお聞きしたいと思いました。

お話のまとめ

 

次回の顔学オンラインサロンは、49日(火)20時から「刺青絵師 毛利清二の仕事」、映画とテレビ時代劇「遠山の金さん」展」の紹介ということで、山本芳美先生(都留文科大学教授・文化人類学)による、あの有名な刺青の絵師にまつわるお話しです。どんなお話かワクワク、またまた興味深い内容になると思います。どうぞご参加ください。

【客員教授 菅沼 薫】

 

 

【顔学オンラインサロン(第56回)のお知らせ】

2024年4月の顔学オンラインサロン(49日)は、都留文科大学の山本芳美先生に話題提供いただきます。今回は、山本先生が実行委員として準備中の展覧会「刺青絵師 毛利清二の仕事 映画とテレビ時代劇「遠山の金さん」展」の見どころを紹介します。

(開催期間:202451日から728日まで。 会場:京都おもちゃ映画ミュージアム)

顔学オンラインサロンは夕食後に気軽に、顔そして顔学について語り合う場です。

非会員の方の参加も歓迎します。

 

【日時など】

日時:202449日(火)20時から(1時間半程度を予定)

会場:Zoomというオンライン会議システムを用いておこないます。

 

【話題提供】

テーマ:「刺青絵師 毛利清二の仕事 映画とテレビ時代劇「遠山の金さん」展」の紹介

話題提供:山本 芳美 (都留文科大学教授・文化人類学)

趣旨:顔学と刺青絵師、何が関係するの?と思われるかもしれません。昭和とそれ以前の時代の映画、テレビ時代劇に登場する刺青のほとんどは、各撮影所に所属する職人たちが俳優の身体に直接描いていました。東映では俳優出身者が刺青絵師となり、俳優開館に2010年ごろまで刺青を描く専用室が用意されていました。映画やテレビ撮影現場での刺青は、美粧部と衣装部、美術部のはざまにある仕事でもあり、刺青絵師は演出にも関わりました。

今回の顔学オンラインサロンでは、1930年生まれの毛利清二さんの刺青絵師としての活動の全貌を紹介する企画展の概容・見どころを紹介します。文化人類学的にイレズミと日本社会の関係を研究する私は、東映京都撮影所に所属した毛利清二さんに20233月より半年間、計45時間以上のインタビューを実施しました。インタビューに並行して、毛利さんの刺青下絵400点以上を京都大学の院生である原田麻衣さんが撮影しデータベースにまとめました。さらにせっかくなので、実際に撮影に用いられた下絵を中心に映画ポスターや映像などとともに展示する企画展を今年5月より京都で催すことにしました。今回のオンラインサロンでは、身体に刺青を「描く」、知られざる刺青絵師の仕事について「昭和残侠伝」(1965年)「仁義なき戦い」(1973年)、「極道の妻たち」(1986年)、「遠山の金さん」(1970年から全804話)などの撮影エピソードの紹介をします。

<山本芳美先生のプロフィール>

1968年生まれ。都留文科大学文学部比較文化学科教授。著作に『イレズミの世界』(河出書房新社、2005年)、『イレズミと日本人』(平凡社、2016年)、『靴づくりの文化史』(稲川實との共著、現代書館、2011年)、『身体を彫る、世界を印す イレズミ・タトゥーの人類学』(共著、春風社、2022年)などがあります。

 

【顔学オンラインサロン申込み