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Cosmetic Science最新のトピック

客員教授からの
お知らせ

トピックス2026.02.23

身近な海で、いま何が起きているのでしょう。ご存じですか?

 先日、三重県鳥羽市で開催された「伊勢志摩海洋教育研究アライアンス成果発表会」に参加しました。三重県の志摩地方には、水族館、大学の臨海実験所、水産研究施設など、多様な海洋研究機関が集積しており、それぞれが海と向き合いながら継続的に研究を進めています。今回の発表会では、こうした機関から最新の研究報告が行われ、現在の海洋環境の変化を多角的に把握できる非常に貴重な場となりました。

 研究機関からの報告では、ここ数年続いていた黒潮大蛇行がようやく正常軌道に戻りつつあり、四国から千葉沿岸にかけての海水温の異常が少しずつ落ち着き始めているという解析結果が示されました。黒潮の流路変動は海藻の生育環境や漁業資源に大きな影響を及ぼしてきました。特に高水温の影響で沿岸域の海藻は大幅に衰退し、磯焼けが進行、海岸線の姿が一変するほどの環境変化が起きていたことが改めて共有されました。一方で、海水温が平常化に向かう現在、失われた海藻群落が時間をかけて回復していく可能性も示され、それをサポートしていく研究の取り組みなども紹介されました。

 私自身の発表では、化粧品を研究してきた一員として、所属企業が大学研究機関とともに、SDGs や「持続可能な自然環境との共生」を意識した取り組みをどのように行ってきたかを紹介しました。社会全体で環境配慮型の研究が重視されてきた流れを整理し、それが現在の海洋環境の課題解決にどのように結びつくかを述べてみました。

 化粧品分野では、海藻由来成分が美容・保湿の面で高い有用性を持つため、研究や製品開発に欠かせない素材です。しかし、沿岸の海藻が枯渇状態にある現状は、今後の原料供給にも影響を及ぼしかねません。だからこそ、地域の海洋研究機関が連携し、海藻の回復や海洋生態系の健全化を目指した取り組みを進めている事実は、化粧品研究に携わる立場として非常に心強く感じられました。

 今回の発表会を通じて、伊勢志摩という地域が海を中心とした知の交流拠点になっていること、そしてそこから生まれる研究成果が私たちの生活や産業に確かにつながっていることを改めて実感しました。海が抱える課題は一朝一夕で解決できるものではありませんが、多様な分野の研究者が連携しながら、持続可能な海の未来を形づくろうとしている姿に強く励まされる一日となりました。  (前山 薫)