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Cosmetic Science最新のトピック

客員教授からの
お知らせ

トピックス2026.07.30

知識だけでは見えないもの ~真珠養殖体験から得た新たな気づき~

このたび、真珠研究に関わる先生方とともに、実際の真珠養殖作業を体験する機会を企画しました。日頃研究に励む学生の皆さんにも、「知識」と「体験」の関係について考えていただきたいと思い、ご紹介します。

私はこれまで約20年にわたり、東京大学、東京海洋大学、三重大学、北里大学、東海大学の先生方とともに、生物学的な養殖真珠の研究を続けてきました。真珠の美しい輝きはなぜ生まれるのか、その輝きを構成する真珠層はどのように形成されるのか。そのような問いから研究は始まり、現在では真珠形成の分子生物学的な仕組みの解明へと発展しています。

研究の成果として、私たちは世界に先駆けてアコヤガイの全ゲノム解析を実施し、そのデータを国際的なゲノムデータバンクへ公開しました。また、多くの学術論文を発表するとともに、5年ごとに国内外の研究者が集う真珠研究シンポジウムを開催し、研究成果の共有と記録を続けてきました。

そのような研究活動を続けるなかで、昨年末に開催した研究会後の懇談の席で、ある話題が持ち上がりました。

「私たちは真珠について長年研究してきた。しかし、実際の真珠養殖作業を経験したことがない。せっかくなら一度やってみようではないか。」

このひと言がきっかけとなり、本年7月1日、先生方とともに真珠養殖の現場を訪問し、ベテラン作業者のご指導のもと、「挿核(そうかく)」と「貝洗浄」を体験しました。

参加した先生方は、真珠形成のメカニズムを20年にわたって研究してきた専門家ばかりです。組織学、生理学、遺伝学など、それぞれの専門分野から真珠形成を研究してきました。

ところが、体験を終えた後の感想はとても印象的でした。

「真珠のできる仕組みは理解しているつもりだった。しかし実際に挿核を体験してみると、『こんな場所に核を入れていたのか』という新たな発見があった。なぜこの位置に核を挿入するようになったのか。その技術が生まれた歴史や背景を調べることも重要ではないか。」

長年研究してきた専門家であっても、実際に体験することで新しい視点や疑問が生まれたのです。そして、その気づきは新たな研究課題へとつながりました。

学生の皆さんも日頃、教科書や論文を通じて多くの知識を学んでいると思います。それはもちろん大切なことです。しかし、知識だけでは見えない世界もあります。実際に現場へ足を運び、自分で体験することで初めて理解できることがあります。

私たちはつい頭の中だけで考えがちですが、新しい発見や気づきは、行動し、自らその場に身を置くことで得られることが少なくありません。今回の体験を通じて、そのことを改めて実感しました。

本年12月には、真珠貝の「浜上げ実習」を予定しています。今回挿核した貝の中から、どれだけの真珠が順調に成長し、美しい珠となっているのか、今から楽しみです。

研究においては知識を深めることが重要です。しかし同時に、現場を知り、実際に体験することもまた大切です。皆さんもぜひ、興味を持ったことには積極的に飛び込み、自ら体験してみてください。その一歩が、新たな気づきや成長につながるはずです。

12月の浜上げの結果については、改めてご報告したいと思います。(前山 薫)