トピックス2022.01.14
菅沼薫のワンポイント講座 「化粧品トレンド研究の基本」(10)化粧品トレンドの掴み方
(10)化粧品トレンドの掴み方
4月から始まった「化粧品トレンド研究の基本」もいよいよ終盤になりました。今月から3回は、トレンド研究で気を付けたいことのまとめに入りたいと思います。
ワンポイント講座の初回に「トレンドとは、現在流行っている現象ではなく、その兆しとしてどの方向に向かっているのかを考えることをトレンド研究と考えています。」と記載したように、これからの化粧品開発や社会や消費行動分析に生かせる内容にしたいと考えて、このテーマでの連載を始めました。つまり、トレンド研究とは流れを読み、半歩先のトレンドを予測することになります。
そこで、私が「感性を切り口にした消費者意識と化粧品トレンド」をまとめた時の調査方法について述べたいと思います。これは、日本化粧品技術者会(SCCJ)のセミナーで講演したものですが、特集解説としてJ-STAGEにも記載されていますので、
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sccj/45/3/45_181/_article/-char/ja/
を参照していただければと思います。
まず私が行ったことは、化粧品各社の歴史を調べることから始めました。大手化粧品会社の技術者に声をかけて、各社の社史を集め、各商品の発売年を一覧できるように年表にしました。1960-70年代には、資生堂「クインテス」「イブニーズ」、カネボウ「ソワドレーヌ」、コーセー「コスメデコルテ」、ほかには「マンダム」なども発売されています。そして、化粧品開発が国内で盛んになった戦後から現在に至る間に注目された化粧品、処方技術、皮膚科学研究、法規制、マーケティング情報、消費者意識、社会現象も含めて、SCCJジャーナル、化粧品専門誌、業界紙、化粧関連書籍、女性誌、新聞等からキーワードをピックアップして同様に年表にまとめました。一覧表にすることで、化粧品市場全体の過去から現在への流れを感じることができました。
化粧品トレンドには、「機能主義」と「自然主義」の2つの大きなうねりがあり、日常では小さな移り変わりですが、全体を見ると大きく転換していることが分かりました。また、化粧品のコンセプトには変わるものと変わらないものがあり、化粧品の基本性能であっても、その訴求表現を時代の流れに見合った言葉にして伝えることで、新たな印象を与えヒット商品になることが見えてきました。
このように、流れを大きく掴むには全体を「見える化」することが必要です。社会の変化を捉えるとき、情報を得る媒体としてはSNSなどの活用も有効でしょう。そして、近い未来を予測するには、先を行き過ぎることなく、消費者に寄り添う気持ちでシーズを探り、COVID-19の影響など社会情勢も踏まえて、トレンドを牽引する新しい動きを捉えることから進めると良いと思います。
今後の掲載予定
4月.トレンド研究とは
5月.化粧品トレンドの特徴
6月.肌悩み調査とトレンド
7月.不易流行
8月.化粧品開発の歴史
9月.化粧品トレンドと社会背景
10月.メイクアップの変遷
11月.スキンケア化粧品の変遷
12月.パッケージデザインの変遷
1月.化粧品トレンドの掴み方
2月.トレンド調査の注意点←来月はこちら!
3月.トレンド予測力の養い方