トピックス2021.05.11
(2)化粧品トレンドの特徴
化粧品トレンドには「Functionalism(機能主義)」と「Naturalism(自然主義)」2つの機運がある。
化粧品に求める消費者ニーズを2つの機運として考えた時、一つは、効果や機能をより強く求める機運Functionalism(機能主義)、もう一つは、自然のものへの憧憬や安心、安全を求める機運Naturalism(自然主義)です。この2つの機運で、化粧品市場が動いているように感じます。1980-90年代は、皮膚科学的解明や皮膚計測機器の発展によって、理論や機能が実感できる化粧品が注目されるFunctionalism(機能主義)の時代でした。その後、9.11(同時多発テロ)や3.11(東日本大震災、原発事故)が起き、社会の不安や科学技術への不信感は高まり、化粧品にも安心を求め自然志向へと傾倒していきました。その時人々が注目したのが自然治癒やオーガニックなどのNaturalism(自然主義)の化粧品です。しかしながら、オーガニックブランドの表示偽装やオーガニック表示に一定の業界基準ができ、自然のものが安心で安全であるというオーガニック神話が揺らいできています。そして、現在はコロナ禍です。安全で効果のある治療薬の開発やワクチン接種を多くの人々が望んでいます。このような時代、化粧品に求められるのも確かな情報と効果ではないでしょうか。そう考えると、いま人々の思う化粧品への機運にも変化が起きつつあり、Naturalism(自然主義)からFunctionalism(機能主義)への転換の予兆であるように感じます。
このような消費社会全体を俯瞰するような感覚も、化粧品トレンドをつかむうえで必要と思います。図には1950年代からの年表の上に、化粧品の開発動向や法律、化粧意識、化粧品トラブルなどを抜粋して示しています。それらに化粧品トレンドの2つの潮流を重ねてみました。2つの潮流である化粧品消費機運について詳しく知りたい方は、J-Stageに掲載の文献を合わせてご参照ください。
感性を切り口にした消費者意識と化粧品トレンド図
参考文献:菅沼薫「感性を切り口にした消費者意識と化粧品トレンド」 SCCJ 45巻3号181-189 (2011)
「化粧品トレンド研究の基本」掲載予定テーマ
4月.トレンド研究とは
5月.化粧品トレンドの特徴
6月.肌悩み調査
7月.不易流行
8月.化粧品開発の歴史
9月.化粧品トレンドと社会背景
10月.メイクアップの変遷
11月.スキンケア化粧品の変遷
12月.パッケージデザインの変遷
1月.化粧品トレンドの掴み方
2月.トレンド調査の注意点
3月.トレンド予測力の養い方