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Cosmetic Science

客員教授からの
お知らせ

トピックス2022.05.19

2022菅沼薫のワンポイント講座

化粧品の使用感評価法あれこれ

  • ファンデーション 

 コロナ禍で外出機会が減り、マスク着用でファンデーションの需要は大きく減少しましたが、化粧品アイテム中4位(2020年経産省統計※)と健闘しています。日本人はファンデーション好きと言われています。古くは江戸時代から「白肌は七難隠す」といって、肌色の白さを重視する文化があったからといえます。

 

 ファンデーションには多様なマルチタスクがあります。ファンデーションの目的と期待される効果は、シミやそばかす、くすみ、クマ、赤みなどの肌色トラブルをカバーし、毛穴、キメ、小じわなど皮膚表面の凹凸を目立たなくし、乾燥や紫外線から肌を守り、肌を明るく均一な色にし、ハイライトやシャドーカラーを用いて顔面を立体的に見せ、自然なツヤと透明感を持たせ、見た目に健康で美しい肌を作り上げるものです。また、ファンデーションは、粉体成分と基剤でできており、粉末固形、乳化型、油性タイプなど、その処方や形態によって容器や化粧用具、使い方が様々あります※※。

 

 今回の使用感評価法では、日常的に良く用いられる春夏用プレストパウダーファンデーションについて考えたいと思います。これは、乾燥したパフを使用するもので、手早く均一に塗布することが出来るため化粧ムラが少なく、簡便な肌色補正用化粧料といえます。使用時にはパフで皮膚の上を滑らせることから、軽い伸びや滑らかな感触、仕上がりの良さが求められます。さらには、ファンデーションは日中長時間塗布時の仕上がりが保たれ、化粧崩れしにくいことも必要となります。 

 

そこで、試験品を実際に使用して、使用感、時間経過後の変化を官能評価★しながら、ファンデーションに求められる機能や感触をリスト化しましょう。また、同時に官能評価で使用感の特徴を数値化、文章化します。そして、どう評価するか、測定機器はないか、疑似モデルなども考えましょう。 

ファンデーション

使用感、時間経過後の変化を官能評価します。

 

 【春夏用ファンデーションに求められる機能と感触 →評価法の例】

 伸びのよさ → 黒または暗色の人工皮革、紙等の上を滑らしながら塗布し画像化

 滑らかな感触 → 表面摩擦測定(KES-SE等を用い動摩擦係数を数値化)

 肌色トラブルのカバー力 → シミ、くすみ、クマ、赤みモデルを用いてカバー力を検証

 毛穴・キメの凹凸隠し効果 → 凹凸あるモデル(すだち、シリコンラバー等)に塗布し画像化

 透明感の有無 → 光透過性の素材(卵殻、摺りガラス、紙等)に塗布、光を透過させて観察

 崩れにくさ → 加温や微細な水油を噴霧するなどして経時を再現、テカリ、透け感等の画像化

 耐汗、耐皮脂 → 皮脂、汗モデルによる耐油性、耐水性の確認と画像化

 よれのなさ → 人工皮革、布、紙等に力を加えて観察、画像化

 肌色経時変化の有無 → 経時による色味の変化を画像化

 紫外線防止効果 → UV試験紙等を用い紫外線遮断効果を測定

    etc.

 

2022年度ワンポイント講座「化粧品の使用感評価法あれこれ」掲載予定

4月 はじめに 化粧品の使用感評価の考え方

5月 ファンデーション

6月 ベースメイク シミ・クマ消し 

7月 マスカラ

8月 口紅

9月 洗顔料

10月 クレンジング剤

11月 化粧水・美容液

12月 クリーム

1月 UV防御化粧品

2月 ヘアケア化粧品

3月 化粧品の使用感評価のまとめ

 

★官能評価については、ワンポイント講座「化粧品の官能評価」こちらを参照ください。

参照:日本化粧品工業連合会 化粧品統計「化粧品出荷」

※※参照:日本化粧品技術者会SCCJ化粧品用語集「ファンデーション(Foundation)」

 

客員教授 菅沼 薫