トピックス2022.12.11
顔学トピックス
地域の顔としてサイトスペシフィックな芸術の表現方法について
第41回顔学オンラインサロン(12月6日)は、「地域の顔としてサイトスペシフィックな芸術の表現方法について」柴田悠基先生(香川大学創造工学部造形・メディアデザインコース講師)にお話しいただきました。
香川県では、瀬戸内海の島々を舞台に国際的な展覧会である瀬戸内国際芸術祭(瀬戸芸)が3年に一度開催されています。瀬戸芸はその土地でしか作る/観ることのできない作品、すなわちサイトスペシフィック(Site-Specific)な作品が多く出展されるそうです。
まず聞きなれない言葉である「サイトスペシフィック」とはなにかということですが、「場所の固有性を重視し、その場所・地域の特性を生かした、すなわちその土地の環境や生活空間、歴史的、政治的、文化的な場の成り立ちまでにも注目し、作品に組み込む」ことをいうそうです。
美しい瀬戸内海の島々ではありますが、高齢化や過疎化など、離島としての悩みも抱えています。そのような地域を元気づけようということで2010年より瀬戸芸が行われるようになりました。
芸術祭には国内外から多くの方が訪れ経済効果も上がり、また、アートが地域活性と住人同士のつながりを深める役割を果たしているということもわかりました。
前回の瀬戸芸2019で、柴田先生たちは2つの演劇作品を企画されたそうです。この地には古くから農村歌舞伎を披露する風習があり、舞台もそろっていたことから、地元の住人や高校生たちを巻き込んで新しい演劇を企画・演出・上演されました。
また、2022年12月16日から25日には、香川県と東京芸術大学が協力して「さとうみ」アート展を開催します。香川県内の高校生が招待アーティストとともに瀬戸内海についてのリサーチ(調査・フィールドワーク)を行い、さまざまな視点から問題提起を行い、企画立案や作品制作や展示などの展覧会開催に至るまでの一連の流れをつかみ、実践をとおして学ぶことが出来るそうです。
このように、今回のオンラインサロンも顔の見える地域活動についての刺激的な内容となりました。
次回2023年1月もオンラインで顔学サロンを開催します。今話題の「ルッキズム」についてです。またまた興味深い内容になりそうです。顔学オンラインサロンは、夕食後に気軽に語り合う場になっています。非会員の方の参加も歓迎しています。(客員教授 菅沼薫)
■次回 顔学オンラインサロン(第42回)のご案内
2023年最初の顔学オンラインサロン(1月17日)は、東北大学の原塑(はら さく)先生により、ルッキズム批判について、自由主義哲学の視点から話題提供していただきます。ルッキズムとは人の評価を見た目の美醜によってすることですが、それは今日的社会問題の一つとなっています。哲学がご専門の原先生は、同大の阿部恒之先生との対話を通して考えを深めてこられました。興味深いお話が伺えると思われます。多くの皆様のご参加をお待ちしています。
【日時など】
日時:2023年1月17日(火)20時から(1時間半程度を予定)
会場:Zoomというオンライン会議システムを用いておこないます。
【話題提供】
テーマ:見た目と個性 ―リベラリズムから見たルッキズム
話題提供:原 塑 (はら さく) (東北大学大学院文学研究科 准教授)
趣旨:ルッキズム(外見至上主義)は、ある人物の価値評価をもっぱら見た目の美醜によって定めるようとする考えや態度のことです。ルッキズム的人物評価を内面化した人は、しばしば見た目のみに基づいて他人を差別的に扱うと同時に、自身の外見に満足せず、恥を感じて萎縮し、自分を責めることもあるでしょう。ルッキズムは、個人の内的生活や社会生活に多大な害を及ぼすことから、批判に値します。ルッキズムと類似しているが、区別されるべきものとして、個性に基づく評価があります。ルッキズムを克服するには、どうしたらよいかを考えていきます。
■ 「顔学オンラインサロン」は、毎月1回火曜日の夜20時から90分、オンラインZoomで開かれています。日本顔学会の会員でなくても無料で参加できます。「顔」に関する様々な話題提供者の話を視聴したあと、参加者同士気軽に意見交換することができます。みなさまもぜひご参加ください。