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Cosmetic Science最新のトピック

客員教授からの
お知らせ

トピックス2025.01.31

顔学トピックス 「顔学オンラインサロン報告」

「感じているけどうまく説明できない!

~顔と肌の色彩・質感の面白さ」とは~

65回顔学オンラインサロン(121日)は、花王株式会社 スキンケア研究所の五十嵐崇訓さんに「感じているけどうまく説明できない!~顔と肌の色彩・質感の面白さ」について話題提供いただきました。五十嵐さんは、主に光学・画像技術を用いた肌のアピアランスの計測・解析や、肌の触感評価に関する基礎・応用研究に従事されています。今回は、顔と肌の色彩・質感関する題材を中心に、科学的な視点からの興味深い研究をお話いただけるということで、60名を超える多くの方が参加されました。

五十嵐さんは、様々な分野の人が顔学会に集まり交流されていることにすごく魅力を感じてくださっており、長い会員歴があります。フォーラム等でお会いしたときは、とても楽しく、嬉しい気持ちになります。そんな五十嵐さんの研究についてのお話に興味津々でした。

まず、「私たちは容易に自身や他者の顔や肌に対して色・質感を感じ取ることができます」というフレーズから始まりました。「顔を見る、観る、診る、視る」というように、顔をみれば、その時の肌の状態や体調、感情、気分まで感じることが出来るのに、同様に、顔に触れば肌の潤いや乾燥、なめらかさや弾力など肌の質感が感じ取れるのに、それらをいざ解析しようと思っても複雑な装置や様々な高度な計測が必要になります。さらに、計測したからと言ってすべてを説明することはできない難しさがあります。そんな難解な肌の色彩や質感を少しでも解析できないかということで、取り組んでいる日々の研究を紹介くださいました。高度な装置を用いた実験や計測風景、結果画像など、たくさんご紹介くださったのですが、ここでは書ききれないので、五十嵐さんが研究発表された各種の文献を参考にしていただきたいと思います。とりあえず文献例として、以下に示す総説も参考になるのではないかと思います。

日本化粧品技術者会誌(J.SCCJ) 2018 52 1 p. 2-7

総説「化粧品開発における質感の評価と制御」 五十嵐崇訓

https://www.jstage.jst.go.jp/article/sccj/52/1/52_2/_pdf/-char/ja

 

最後に、五十嵐さんから「感じているのに説明しづらいことを科学する魅力を分かちあえればと思います」とのメッセージがありました。顔学会に集まるみなさんは、その魅力にすでにはまっているかもしれませんね。お互いに交流し、刺激しながら、「感じているのに説明しづらいことを科学する」楽しみをご一緒に!

次回の顔学オンラインサロンは24日(火曜)の20時から、昨年のフォーラムで菅沼賞を受賞した「顔型の人工皮膚」を開発された宮地克真さん(メナード化粧品)に話題提供いただきます。顔学会では初めての幹細胞に関わるお話ですので、またまた楽しみです。顔学会の会員でなくてもサロンに参加できます。ぜひお集まりください。(菅沼薫)

画像 話題提供表紙と五十嵐崇訓さん

 

【顔学オンラインサロン(第65回)のお知らせ】

2025年2月の顔学オンラインサロン(24日)は、メナード化粧品総合研究所で人工皮膚を研究されている宮地克真先生に話題提供いただきます。幹細胞を用いて顔の形状を持った人工皮膚の開発に取り組まれてきた最新の研究の成果について、また、私たちの顔の皮膚の質的個性がどのように化粧品に活かされ、再生医療をつくる未来になるのか、興味深いお話が伺えます。

 

【日時など】

日時:202524日(火)20時から(1時間半程度を予定)

会場:Zoomというオンライン会議システムを用いておこないます。(無料)

 

【話題提供】

テーマ:「試験管の中で人間の顔が創れる!?~人工全顔皮膚モデルの開発と応用性について~」

話題提供:宮地克真 (日本メナード化粧品総合研究所 研究技術部門 技術開発部II 応用細胞研究グループ)

趣旨:幹細胞は皮膚の再生を担う重要な細胞です。この幹細胞を体外で培養し、生体の皮膚組織を模倣した人工皮膚モデルを作製することが可能となり、皮膚の研究や、化粧品開発、再生医療などに活用されています。これまでに我々は、3次元的、且つ安定的に人工皮膚モデルを作製する技術を確立し、化粧品成分の評価や、肌の老化メカニズムの解明を進めてきました。従来の人工皮膚モデルは平坦なシート状のものが一般的であり、人間の顔のような複雑な3次元形状の再現には至っていませんでした。また、化粧品の評価に用いる人工皮膚モデルは本人の細胞を用いていないため、本人の皮膚の性質の再現もできてはいません。今後、個人の顔の老化メカニズムを解析し、パーソナライズな化粧品の開発を進めるためには、個人の“顔の形”と“皮膚の性質”を再現した次世代の人工皮膚モデルが必要であると考えています。

 今回我々は、幹細胞の3次元培養に適した独自の培養足場を開発するとともに、ドナーの毛髪の幹細胞を用いることで、本人の“顔の形状”と“皮膚の性質”を再現した新しい人工皮膚モデル【人工全顔皮膚モデル】の開発に成功しました。この人工全顔皮膚モデルの顔学研究や化粧品開発、再生医療などへの応用の可能性についてお話しします。

 

【顔学オンラインサロン申込み】

https://www2.jface.jp/salon/php/salon_entry/index.php