トピックス2021.11.28
さよなら IFSCC Conference !!
以前に南野先生が受賞論文の速報をアップされていた第26回IFSCCメキシコ Conference が、オンデマンドでの視聴期間も含め本日終了しました。IFSCCではこれまで偶数年は大きな規模で開催されるCongress(本大会)、奇数年は規模が小さめなConference(中間大会)が開催されてきましたが、本年のメキシコ大会を最後に中間大会に終止符が打たれました。来年(2022年)以降は毎年、IFSCC Congress(本大会)が開催されることになります。2020年の横浜大会に引き続き、今回のメキシコ中間大会も100%オンラインで開催されました。主催するメキシコ協会も最後までリアル開催を目指していましたが、結局はCovid-19が収束せずオンライン開催となったため、横浜大会の成功の原動力となった南野先生の大会の企画運営やノウハウの数々がメキシコにも伝承されることになり、今大会の企画運営に大きく役立ちました。
大会を振り返ってみると、まず全参加者673名のうち、日本からは169名(25%)で、これは2位のホスト国メキシコの88名(13%)を大幅に上回るダントツの1位でした。また35報の口頭発表中7報が日本からで、フランスの7報と並び国別で最も多い発表数となりました。南野先生の速報をご覧いただければわかるのですが、口頭の最優秀賞は日本の資生堂が受賞しました。全部で250報のポスターのうち、数こそ日本は23報で4位でしたが(1位は中国の74報)、日本ロレアルの最優秀ポスター賞を含めベスト10ポスターの中に日本から4報もあったことからもそのクオリティの高さは他国の追随を許しませんでした。つまり、大会参加者数も発表した化粧品科学のクオリティの高さも日本が群を抜いてトップでした。
こうして見ると、今大会も例年に違わず日本が主役で、中国や韓国とともにアジア勢の台頭が目立ちました。上記速報に含まれていないホスト国賞など、全受賞情報をC&T(Cosmetics & Toiletries)のサイトから見ることができます。更に、資生堂の受賞論文の内容に興味のある方は同じくC&Tのサイト(資生堂の受賞論文詳細)をご覧下さい。今大会の論文もサステナビリティ、エコ、グリーン、AI、IT、コロナなど正に現代社会の関心事に関するタイムリーなキーワードに満ち溢れており、それらに我々がどのように日々影響を受け、化粧品や化粧行為がどのようなソリューションを提供し得るかの提案が多くなされた印象でした。
新しい研究の発表が主体であったのと共に、基調講演を通じて過去の技術の振り返りもなされました。その中の一つでスイスのRainer Voegeli博士による「肌の保湿」に関する基調講演では資生堂在籍時の平尾先生による未熟な角化膜とバリア機能が低下した表皮との相関について明らかにした論文が紹介され、改めて平尾先生がメインストリームの皮膚科学のマイルストーン的な研究に携わっていらっしゃったことが確認できました。
昨年、今年と二度のオンラインのIFSCC大会が続き、色々なことが分かってきました。一番驚いたのは今までのリアルなIFSCC大会の参加者はほとんどがIFSCCの会員、即ちIFSCC加盟国の化粧品技術者会(日本であればSCCJ)に属しているメンバーだったのですが、昨年の横浜大会も今年のメキシコ大会もIFSCCの非会員の参加が多く、今年は会員:非会員の比率が 51% : 49% でした。今回参加された非会員の多くはコロナ前のリアル開催では、参加登録費が高く、旅費もかかるため大会参加を見送ってきた大学関係者が多いのではないかと推測されます。とにかく、廉価のオンライン大会が全く新しい参加者層の獲得に成功したことには大きな意義があるものと考えられます。この潮流を受け、今後は仮にコロナが終息したとしても、様々な学会はオンラインの要素も残したリアルとオンラインが共存するハイブリッドな大会がトレンドになるように思います。そうは言いつつ、欧州での感染状況の拡大が少し気になるところではありますが、来年の9月のIFSCCロンドン大会こそは、3年ぶりのリアル開催になるのでは?と期待を込めて待ち遠しく思う私です。(神田不二宏)